パパがお休みの日のお昼だけ、近所のパートに行かせてもらっている。
お仕事が終わると、パパがベビーカーでこうちゃんを連れてお迎えに来てくれる。
今日は新メニューを買って帰りたかったので、2人にはお店の外で待っててもらって、私だけが店内に買いに行った。
数ヶ月このパートをやっているうちに、常連さまのお顔やオーダー、支払い方法も覚えて、それで喜んでいただいたりもして、軽い世間話もするようになった。
勿論、お昼はとても忙しいので、その世間話も一瞬ではあるのだけど、実は私、仕事中もずっと喋っていたい人なので、一瞬でも嬉しい。
常連さんの中に、“元”気難しいおばあさんがいる。
最初はかなり手こずったのだが、今では仲良しになったおばあさん。
前回接客した時に
「最近あんたいないじゃないの」
と言われ
「一時保育の空きが全然なくて、なかなか出勤できなくて」
と説明したら、私に小さな子どもがいる事にびっくりしていた。
その日、おばあさんは顔に湿疹が出ていて、声もいつもより弱々しかった。
その後2週間も全く会えていなかったので、そろそろ心配になってきたところで、私と同じ商品受け取りの列に、そのおばあさんを見つけた!
思わず駆け寄って
「お久しぶりです!お元気でしたか?」
と声をかけてしまった。
おばあさんは
「元気よ!今日もあんたのお店の売上に貢献しなきゃと思って、来たわよ!」
と、元通りのお元気さで、安心した。
おばあさんは、商品受け取りもそっちのけでお店の外へ出て、こうちゃんを見に来てくれた。
夫はちょっとびっくりしたのかもしれないけれど、私がお客様と仲良くなりがちなのは知っているので、落ち着いて挨拶していた。
おばあさんは、夫の顔と私の顔をまじまじと見つめ、
「うーん、お母さん似かな?」
と言った後で
「ほっぺがぷくぷくだからそう思っちゃうだけかしら」
とつぶやいた。
ダイエットの必要性を感じる一言であった。
このおばあさんは、ほんわかした雰囲気ではなく、小さくて痩せていて弱々しい外見とは裏腹に、口調も顔つきもどちらかというときつめで、厳めしい雰囲気である。
私はなんとなく、仕事をしてきた人なのではないかと感じている。
管理職を通り越して経営者っぽい匂いがするのである。
でも、芯は優しくて、心も広い。
私が最初の不慣れな時から見守ってくれて今こうしてちょっと突っ込んだ交流ができているのだから、懐が深いのは間違いない。
ご近所のお年寄りはみんな見るからに優しそうなタイプだから、こうちゃんから見たらニュータイプのこのおばあさんに、こうちゃんはどんな反応をするんだろうと興味深く眺めていたら、
かなりの時間真剣におばあさんの顔を見つめた後で、笑顔全開になった。
やっぱり赤ちゃんは人間の本質を察知するんだなあ。
店内で同じ番号を何回も呼んでいるのが聞こえたので、おばあさんとはそれでバイバイした。
王道の主婦プレイがしたくて「パートに行く」というフレーズを言いたいがためだけに始めたパートだけれど、なかなか楽しんでいる自分がいる。
やっぱり私は、事務職とかより人と対面している仕事の方がいいな。