2021年6月23日水曜日

【生後419日】介護パート始めます。【1歳1ヶ月24日】


私が私に、ちょっとしたプレゼント。


どうしても心に引っかかって離れないこと。


私はあれを経験したら、きっともっと人生が豊かになる。


3年前にやろうとして、今じゃないなと思ってやめたことを、

ついにやる時が来た。


介護のお仕事をしてみよう。


その介護施設は、うちから近くて、歩いても行けるし、自転車でもいいし、雨ならバスもある。


時給、良い。


託児所つき。なんと無料。


ただし私は、資格も経験も無い。


だけど、妊娠中から現在まで、たくさんのお年寄りの方々から優しく親切にしてもらった恩返しを、しなきゃいけないと思う。


ゆくゆくはやりたい事が2つある。


でもそれまでの時間を、恩返しと、学びに使うのは、きっととても有意義だ。


得る知識と経験は、きっと誰かの何かに役立てられる。


それでも気になるのは、この選択が、こうちゃんにとって良いかどうか。


こうちゃんが大好きな一時保育の保育園に訊いてみたら、掛け持ち先に企業内保育所がついていても、変わらずこれからも利用していいとの返事。


良かった。大好きな先生たちとさよならしなくて済む。


私の理想イメージは、ファミリーデーを死守しつつ、お馴染みの一時保育と今のパートも続けながら、託児所つきで学びの多い仕事も掛け持ちして、労働時間が増えて利用調整の点が増えたおかげで保育園に受かるところまで。


絶対に実現する。


この新たな一歩によって、こうちゃんは大好きな保育園に、一時保育ではなく通常保育として通えるようになる。


そこに通じる道を、今私は歩いてる。


緊張しながら、今日、面接に行ってきた。


タウンバスに乗り込んで、料金を払ったら、見かけない顔だからか運転手のおばちゃんが

「どこまで?」

と訊いてきた。


「✕✕✕✕っていう所まで」

「◯◯ホームに行くの?」

「あ、そうです」


おばちゃんが、なぜか飴をくれた。


発車時刻が来て、バスは走り出し、運転手さんは他の乗客と世間話を始めた。


しばらくしてまたおばちゃんが訊いてきた。

「あそこにお勤めなの?」

「いえ、面接に行くんです」

「あら、いい事ね。素晴らしいお仕事よ」


おばちゃんはバスを走らせ、停留所からずれた、建物の正面で停めてくれた。


「ここよ」

「ありがとうございます」

「面接は、緊張せずにね。はいこれ、元気玉」


私の手に、さらにどさどさと飴が降ってきた。


***


面接が終わって、結果は1週間以内に知らせますと言った後で、その採用担当の人が、介護主任の人に問いかけた。


「私は、今お話しした感じでは、充分一緒にやっていけると思うんですが、どうですか?」


「僕もそう思います。」


私は間髪入れずに口を挟んだ。


「自分で言うのもなんですが、おすすめですよ」


二人が同時に吹き出した。


「タフですし、失敗したらメソメソ泣くとか面倒くさいこともありません。老若男女問わず、ごめんなさい解らない教えてを言うことに抵抗もないですし。」


マスクで見えないかもしれないけれど、にっと笑ってみせた。


介護主任が、笑いを噛み殺しながら、

「わかりますよ」

と言った。


採用担当の男性は

「実は私も、全くの未経験で、小売業から来たんです。大丈夫です。一緒に頑張りましょう!」

と、勢いよく立ち上がった。


かくして私は、採用された。


その後、実はいちばん大事なポイント、保育ルームの見学に連れていってもらった。


以前、とんでもない企業内保育所を目にしたことがあるので、要注意だ。


しかしそれは杞憂に終わった。


感じのいい保育士さんが、主任に連れられた私を迎えてくれた。


落ち着いている人。大丈夫だ。


あいさつを交わしたところで、預けられている小さな女の子が、私の足元に駆け寄ってきた。


「ねえ見て!ブロックして遊んでるの!」


手に持ったブロックを掲げて、見せてくれた。


私がかがんで

「わあ、ほんとだ!きれいな色のブロックだねえ。なに作ってるの?」

と訊くと、女の子は

「お城!」

と答えて、他にも色々と持ってきて見せてくれた。


女の子のブロックの説明が白熱してきて、私はほとんど保育士さんと会話を続けられず、気づいたら保育士さんが二人に増えていた。


2人目の保育士さんも、とても感じのいい落ち着いた人で、ああ大丈夫だと思った。


部屋を出るタイミングが来たっぽかったので、女の子に

「今度ちいさな男の子と一緒に来るから、遊んでくれるかな?」

と訊いたら

「ちいさい子?うん、いいよ!」

と言ってくれた。


とっても広いから、こうちゃんも動き回りがいがありそうだ。


もしこうちゃんが変な感じを見せたら、このお話は無かったことにするけど、なんとなく大丈夫そう。


続いて私は、ゴールデンレトリバーに紹介された。


1歳だそうで、セラピードッグとして入居者さんたちと過ごしているらしい。


わんちゃんは、私と私の荷物を全て舐めつくし、私の顔と首までべちゃべちゃにした後、私に寄りかかってごろんと横になってくつろぎ始めた。


どうやら仲良くしてくれるみたい。良かった。


もう一匹セラピードッグがいるらしいんだけど、その子は今日はもう退勤したって。


その子はコーギーなんだって。


え、ここってもしかして、楽園じゃない?


次回、こうちゃんを連れていき、馴染めそうだったら契約書にサインする。


きっと大変なことがいっぱいある。


エグいものも目にするだろう。


人間というものを直視することになるんだろうな。


でも、頑張ってみる。



2021年6月20日日曜日

【生後417日】夫の好きなところ【1歳1ヶ月22日】


子どもが1歳を越えたこの辺りで、パパの好きなところを書き残しておく。


というのも、自分が意外なポイントを重視していることに、つい最近気づいたから。


そのポイントとは、『味に誠実に付き合ってくれるところ』。


私は料理が、好き。


インスタに載せられるような小綺麗でおしゃれなものは作れないけれど。


凝ったものも作れない。


だけど料理は面白いから好き。


私の好みと、夫の好みと、両方を完全に満たすラインを毎日攻めている。


その挑戦は、心地よい緊張感をもたらしてくれる。


納得がいかなくて、


「ごめん、もうちょっと待って。塩が決まらない」


なんて待たせてしまう日もあるけれど、夫は決して「どうでもいいよ」とか失礼な事を言わない。


黙って頷いて待っている。


ちなみに夫は、調理師専門学校を卒業したけれど料理は一切しないソムリエで、

私は普通の大学の経営学科を卒業したソムリエだったので、

二人とも料理人ではない。


でもレストラン勤務経験があるという点では同じなので、『作っている人の感覚を信じて待つ』のは慣れている。


たかが毎日の晩御飯で、「塩が、、、」なんて言っているのは、たぶん面倒くさい奴なんだろう。


そこを普通に受け入れてくれるところが、ありがたい。


先日、麻婆豆腐がとっても美味しく出来て、大量だったので翌日も少し食べてもらう事になった。


しかし一晩冷蔵庫で寝かせたら、味が変わってしまった。


夫に「このままでいいと思う?」と味見をしてもらうと、

「うん、美味しいよ? 俺はこのまま出してもらっても」と言う。


「味が丸くなっちゃったのが気になるんだよね。花椒を入れるか、醤油か、、、」


と悩んでいたら


「胡麻油たらしてみようよ」


と言ってくれて、そうしたら一気に麻婆豆腐が生き返って、二人で大喜びした。


マヨネーズと酢醤油の最高の配分というどうでもいい実験も一緒にしてくれるし、


パスタを最高の状態で食べるために「できた!行くよー!今!早く!私、秒で動いてるから!早く!」

といきなり鬼シェフみたいに急かしてもおとなしくサッと食卓についてくれる。


とろみをつけた野菜炒めを大皿に盛り付けようというタイミングで

「丼で食べたい」と言ってきた夫に対して

「丼で食べるならもうちょっと味濃くしなきゃだから、却下です」

とすげなく断っても怒ったりせず「なるほどね」と納得してくれる。


「うーん、この量を食べるんだったら、もうちょっと手前で止めても良かったかもね」

という振り返りも、冷静に伝えてくれる。


どちらかの身に何かが起こる日まで毎日続くごはんを、これほどまでに真剣にストレスなく美味しく食べていけるであろう相手は、夫以外にいないだろう。


夫はイケメンではないし、高給取りでもないけど、私はそのどっちも求めていなくて、毎日のごはんに対する関心度がほぼ等しいことだけで充分です。


こうちゃんはパパがいってきますをすると泣く。


パパが帰ってくると、階段に付けた安全ガードのところまで急いでハイハイしていって、ものすごい笑顔でパパが上がってくるのを待つ。


これだけで、パパとしても素晴らしいのが判る。


これからも、みんなで仲良く暮らそうね。


2021年6月13日日曜日

【生後410日】おばあちゃん達は子育ての先輩である。【1歳1ヶ月15日】


最近のこうちゃんは、信じられないくらい大きな声を出す。


この小さな体でどうしてこんな大きな声が出るんだろうと不思議なくらいに。


例えば、私が鋏を使ってるのを見て、いそいそとやって来て手を伸ばしたけれど、私から

「これは危ないから、ないないね」

と隠されてしまった時など、


「あんにゃーーい!!」


と不満の叫びを上げたりする。


渡してもらえない時の理由が大概“危ない”だからか、不満な時は「あんにゃーーい!!」である。


そしてその後、自分がいかに不満であるかを演説し始めるのだが、それもまた大音量。


「ほんとに駄目なの。おてて痛い痛いになっちゃうから。」


「にゃい!!💢 あんにゃい!!💢」


「もうちょっと大きくなったら、こうちゃん用のはさみ用意してあげるから、それまでは切るのはママに任せてよ」


「・・・」


「お? 解ってくれた? ありが」


「うっ、きいーーーーーーーーー!!!!!」


鼓膜が破れそうな金切り声を上げられる。


そんな状況が度々あるので、うちと背中合わせになっているおうちには、前から申し訳なく思っていた。


この袋小路の人たちなら顔と名前も一致しているのだが、一本向こうとなるとちょっと自信がない。


たまにある地区清掃で少しずつ覚えていたのだが、コロナでそれもなくなってしまって、私の情報量は増えていない。


そんな今日、すっかり忘れていた町会費の回収に、たぶん初めてお会いするおばあちゃんがやって来た。


しまった、今日回収だって回覧板に書いてあったのに、私とした事がすっかり忘れていて、現金が、ない。


謝って、後でお届けする事にさせてもらった。


そのおばあちゃんが帰っていった後、いつものお隣のおばあちゃんから


「おうち判るの?」


と訊かれた。


「Tさんって仰ってたので、端から表札見ていこうかと、、、」


「あらやだ、訊いてよー(笑) おたくのちょうど真裏よ」


「えっ、そうなんですか!」


なんと、さっきのおばあちゃんTさんが、うちのリビングからの奇声をダイレクトに聞いているであろうおうちの人だった。


私は銀行に行って現金を下ろしてから、こうちゃんに電車や車をたくさん見せて上げられるルートでお散歩をし、少し緊張しながらTさん宅へ向かい、インターホンを鳴らした。


Tさんは、ちょっといかつい感じのおばあちゃんだ。


うちの袋小路の人たちに共通するほんわか系ではなく、チャキチャキ系で、厳しそうな印象だった。


はっきりもの言いそうだな。。。


出てきたTさんに、謝りながら町会費を渡した後、私は少し怯えながら切り出した。


「いつも騒がしくて申し訳ないです。ちゃんとご挨拶しなきゃと思ってたんですけど、あの、お顔が判らなくて、、、5月のお掃除の時にYさん(うちのお隣さん)に教えてもらおうと思ってたんですけど、中止になっちゃってそのまま、、、」


叱られている小学生の如くしどろもどろになりかけたところで、Tさんが豪快に笑いだした。


「全然!大丈夫よー!2回くらいかな、泣き声が聞こえたんだけどね、それで“あら、赤ちゃんがいるわ”って思ったんだけど、それから聞こえなくなったから、もう大きくなったのかと思っちゃってたわよー!」


私はその豪快さに圧倒され、もぞもぞと

「いや、ほんとに、、、朝から晩まで、、、最近だと金切り声みたいなのも上げてて、、、」

と、何かを喋っていた。


Tさんはこうちゃんを優しく眺めながら

「そういうものよ!」

と言い切った。


こうちゃんがよだれ掛けを引っ張ってしゃぶっているのを見て、Tさんはかがんで話しかけた。


「あら、あぶちゃん美味しいの?」


最近ではかっこよく『スタイ』と呼ばれる中、私は古風に『よだれ掛け』と呼んでしまうのだが、更に上がいた。


『あぶちゃん』。


懐かしい響きだ。


「男の子だもんね、そりゃあ元気よね! うん、可愛いのねえ。あら、バイバイできるの? おりこうさんねえ」


誉められたので、こうちゃんはより一層にこにこしている。


背を伸ばして私に向き直ったTさんは、毅然とした態度で、こう言った。


「私達はみんな、子育てしてきてます」


「は、、、い」


「子ども3人、孫6人育てたのよ」


「そんなに!」


「なんっにも気にしないで、のびのび子育てしてあげて下さいね。それが一番大事なんだから」


私は何かに衝撃を受けて、ちょっとぼんやりしながら家に帰った。


何の衝撃だろうか。


こうちゃんに麦茶をあげながら考えた。


安心と、感激だ。


どんな大人になりたいかって、子どもの頃からずっと考え続けてきた。


立派な大人、まともな大人、自分のケツは自分で拭ける大人。


自力した大人、楽しそうな大人。


その時々で、変化したけれど、いつでもそうなれるように努力はしてきた。


でもそうじゃない気もしていた。


頑張ったからなれる大人じゃなくて、自然になる大人がポイントだと思った。


なにかになろうとするんじゃなくて、どう生きてきたかの結果がそのまま表れる。


今日私が見たのは、他者への理解だった。


いや、今までもずっと、それを見てきたんだ。


ご近所さんからも友達からも、みんなに優しくしてもらって、いつもとても嬉しくて幸せな気持ちになった。


全部これなんだ、他者への理解。


自分が欲しいものと、自分がなりたいものが、初めて一致した。


だから衝撃だったんだ。


すごいね、本やテレビからじゃなくて、裏のおばあちゃんきっかけで気づくなんて。


まあ、裏のおばあちゃんと言っても、犬を7、8匹飼っていて庭に噴水があるおうちだから、もしかしたらただ者ではないのかもしれないけれど。


のびのび子育てしよう。


普通に暮らしてるだけでも、日常には気づきと学びが溢れている。


私が毎日を大切に過ごしていれば、こうちゃんもきっとそうなる。


自分の周りをよく見よう。


今日あのおばあちゃんと話せて良かった。


【生後401日】こうちゃん ついに鼻の存在に気づく。【1歳1ヶ月6日】


今朝、私が悲鳴をあげる出来事があった。


こうちゃんが鼻をほじっていたのである!


まあ、ほじるというよりは、鼻に指を入れてるだけなんだけど、

それでも衝撃的だった。


私「ひゃあ! (悲鳴&硬直) 」


夫「そうなんだよー、なんか昨日から鼻に指入れるんだよー」


前からこうちゃんは、パパやママの鼻に指を突っ込んできてはいた。


指が細いからかなり奥まで来て痛いんだよねえ。


それに、向きとか構造とかを考えてくれないから、うっかりしてると鼻フックみたいにされてツラいのよね。


しかし、ついにその鼻が、自分にもついていることに気づいた、って事なんだろうな。


ああ恐ろしい。


なぜこんなに私が恐がっているかというと、昔どこかで、幼稚園児が鼻にどんぐりを詰め込んで取れなくなってしまい、耳鼻科に行ってやっと出してもらえたという話を聞いたことがあるからです。


想像するだけで痛い。


これだけは阻止したい。


鼻に物は入っていかないのです。


出てくるだけ。


鼻水とかが出てくるだけよ。


逆は無いのです。


それをきっちり教えておかないとな。


ちなみにパパは、子どもの頃、鼻にどんぐりを入れた経験があると言っていた。


私は、ない。


想像したこともないよ。


何がどうなったらどんぐりを鼻に入れてみようって思いつくのかも解らん。


どうかこの子はお鼻にどんぐり詰めたりしませんように。