2020年8月27日木曜日

【生後119日】無反応おばあちゃん。私のご近所物語【生後3ヶ月28日】


うちのご近所さんたちはお年寄りが殆どで、しかもここに長く住んでいる人ばかり。


我が家だけが新参者なのだが、皆さんとても親切で、仲良くしてくれている。


ゴミ出しやお散歩、スーパーの行き帰り等で会えば、しばらく立ち話もしてくれる。


その中に一人だけ、まだ話したことのないおばあちゃんがいた。


息子さんと同居しているのだが、その人は夫と同世代に見えるので、おそらくおばあちゃんは70代。


小さくて、背中が完全に曲がっていて、いつも自分の爪先を見ながらゆっくり歩いていく。


あれでは前が見えないからぶつかったりしないのだろうかと心配になる歩き方だ。


夫も私も、会えば「こんにちはー」と挨拶するのだが、何も聞こえなかったかのようにそのまま歩いていくので、お歳だから耳が遠いんだと思っていた。


この日私は、こうちゃんを抱っこして図書館から帰って来たところで、前方にそのおばあちゃんを見つけた。


おばあちゃんはとてもゆっくり歩くので、自然に追い越す事になるのだが、その瞬間にいつものように「こんにちは」と言った。


勿論、反応が返ってくるなんて思っていなかった。


ところが❗


おばあちゃんが足を止めた。


ゆっくり私の顔を見上げ、にこっとした。


あんまりびっくりしたので、スローモーションで覚えている。


それからゆっくり目線が動いて、抱っこ紐を見た。


わあ、みたいに息を吸った後、すごく穏やかな声で


「見せて」


と言われた。


初めて声を聞いた❗


というか、目が合ったのも初めてだ❗


私はおばあちゃんの目線に合うようにちょっとかがんで、こうちゃんのお顔を見せた。


「まあー、可愛らしい」


「ありがとうございます」


たまに接客業が抜けきらない切り返しがいやになる。


「ぷくぷくね」


「そうなんです、ちょっとおデブちゃんで、、、」


「元気そう。あら、笑ったわ。可愛らしい」


おばあちゃんはしばらくの間、笑顔でこうちゃんを眺めて、いきなりまた歩き出し、こう言った。


「女の子ね」


初めて言われたからびっくりした。


私も遅れて歩き出しながら


「男の子なんですよ」


と言ったら、おばあちゃんは意外な速さで戻ってきて、もう一度こうちゃんの顔を眺めた。


こうちゃんもおばあちゃんを見つめている。


おばあちゃんと赤ちゃんが見つめ合っているのは、なかなか素敵な光景だ。


写真を撮りたいような、平和な光景だった。


「優しいお顔してるから、女の子だと思った❗」


と言って、おばあちゃんは背中を伸ばして笑った。


なにからなにまでびっくりする出来事だった。


聞こえてたし、話してくれたし、意外に速く動いてたし、女の子だと間違われたし、背中伸びたし❗


初めてあのおばあちゃんの顔をちゃんと知った。


声もそうだ。


知れて良かった。


いつもはきっと、まっすぐ歩を進める事だけで一生懸命なんだろうな。


この日は多分、体調も良くて、余力があったのかもしれない。


なんにせよ、いい日が巡ってきた事に感謝。


ずっと挨拶し続けてて良かったなあ。


途中でやめてたらこんな日は来なかっただろう。


またお話しできるといいな。


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