2020年5月3日日曜日

妊娠38週6日からちょっと39週0日にはみ出した私の出産当日の話



この日は、朝6時からほぼ10分おきに激痛を1時間半繰り返した。

病院に電話すると

「え、12分とかもあります? じゃあ、全部が10分切ったらまたお電話していただけますか?」

なるほど、そういうもんか。

夫は「こんなに痛いのに? まだダメなの?」
と悲しげな顔。

9時半くらいに、ようやく激痛の間隔が3~7分になった辺りで
病院から、来て下さいと言ってもらえた。

タクシーで25分“も”かかる事を伝えたんだけど
電話の助産師さんは

「あら良かった、近いですね❗」

そうなのか。

マタニティタクシーの配車が少し時間がかかって
10:40に病院に到着。

タクシーの中では、痛みがどんどん増していて
黙って夫の手を握りしめて耐えていた。

私は昭和の日本人だから、タクシーの運転手さんという他人がいる前で
みっともなく苦しむ訳にはいかないのだ。

病院では、最初に分娩室に入ったんだけど
これはまだ陣痛ではない説もあるとのことで
一旦陣痛室に移って金目鯛のお昼御飯を食べる。

ここでも昭和の日本人気質が災いした。

「まだ我慢できるレベルですか?」

「、、、できなくはないです」

そう、我慢できない事なんて滅多にないと思っているのだ。

私の出産希望は『痛くなくて、短時間』で提出してある。

この『短時間』の方を尊重してくれた助産師さんが親切に

「和痛の麻酔を始めてしまうと、お産が緩やかになって時間が長くなってしまうので、もしまだ我慢できるのであれば今ちょっと頑張って、和痛を始めるのをもう少し後にするとか、、、どうですかね、頑張ってみます?」

「はい、頑張ります」

実は死にそうであるが、そう答えてしまう悲しい性。

そこで2時間くらいを過ごしたんだけど、辛すぎた。

ていうか、これを回避するためのプラス10万円の和痛分娩なのでは?

よし、次誰か通ったら、自分から言おう
「もう始めて下さい」って。

そう決意した時、通りすがりのお医者さんが私の呻き声を聞いて飛んできて

「大丈夫ですか⁉️すごく痛いんじゃないですか⁉️」

「痛くなってきました(泣)」

着いた時からMAX痛いんだけど、それ言ったらあの助産師さんの思いやりに悪いので
最近痛くなってきた事にする私。

その女医さんは、他のスタッフさんたちに

「あんなに痛がってるじゃないですか❗始めてあげて下さい!
元々和痛分娩希望の方ですよね⁉️」

と強めに言ってくれたので、一気に流れが変わり
14:15 再び分娩室に戻り、私は手術着になった。

この女医さんが、最後まで大活躍する。

ちなみに、この時点でも、服を脱ぐのも痛くて海亀の産卵くらい涙が流れていたが
昭和の日本人なので、声は出さない。

病院の入り口で待機していた夫が呼ばれ
入院手続きを指示されたり、私の飲み物を買いに行かされたりしていたようだが
私は車椅子から最後にちらっと姿を見たのみ。

コロナ対策で、私が妊婦として分娩室に入った瞬間から
もう私とは接触を持てないのだ。

うんと心細くなった。

その後、注射嫌いには拷問の時間が訪れる。

点滴の針を刺すだの、失敗しただの、じゃあ反対側にしようだのって恐怖の時間の中で
背中に和痛の麻酔を入れるチューブも挿入され
実は出産よりもこのステップへの恐怖が大きかったので
ひたすらに海の底をイメージして心の平静を保つ。

私は知っているんだ。

麻酔さえ効いてしまえば、あとは天国だってことを。

やがて本当に麻酔が効き始めると、嘘のように痛みは消え去り
トータル18時間のお産ではありましたが
もう何にもツラいことは起こらなかった。

色んなことは、確かに起こった。

3時間以上たっても破水しないとか。

陣痛促進剤を開始したら、ぽこぽこ君の心音がどんどん弱っていって場の空気がピリッとしたりとか。

あの女医さんが、横からエコーを見ていて何かを発見し
帝王切開になるかもしれないけどいいかと確認してきたり。

陣痛促進剤をやめたら復活してきたぽこぽこ君が、まっっったく下の方に降りてこようともしない数時間とか。

麻酔があんまり効かなくなってきて、ずっと仰向けでいる事自体がもう腰痛持ちにはツラくなってきた時に
またその女医さんが様子を見に来て
「もっと強いのにしてあげていいよ」と許可を出したりとか。

これまた、その女医さんが、若いお医者さんの見ているエコーを
「ちょっと貸して」といじくり始めた結果、ぽこぽこ君が頭ではなく顔から出ようとしている事が発覚するとか。

結局、いくら待っても顔からモードのままなので
その女医さんが手を入れて向きを修正してくれた。

凄いのよ、一発で直った。

最後は、いきみかたを教えてもらって、私がいきむと同時に若いお医者さんが引っ張り出すという共同作業になったんだけど、
8回やって上手くいかなかったのね。

そしたら、後ろから見ていた例の女医さんが
「ちょっとやらせてよ」と交代して試してみて、

「鉗子使おうか」

、、、❗❗❗

ちょっと怖い❗

しかし、私は聞いてしまったのです、、、

和痛の麻酔がもう無い、ストックも無い、という小声のやり取りを、、、

あと15分くらいかな、という呟きを、、、

。。。

コロナのせいで医療物資の流通にも影響が出ているのか?

ヤバい、早く終わらせなければ、普通分娩になってしまう。

私が上手くいきんで、この女医さんが一発で引き出せれば
無事に終われる気がする❗

女医さんがふらっと姿を消した。。。ど、どこへ、、、⁉️

若いドクター達が鉗子を用意している。

カシャンカシャン音がする。

不安だ。

鉗子なんて、DIR EN GREYのPVみたいじゃないか。

その時、あの女医さんが、いかにもオペ❗って感じの装備になって戻ってきた。

しかも、透明の液体が入った注射を持って。

「ちょっと種類は違うんですけど、よく効きますから、心配しないでくださいね」

私の背中が、追加の麻酔でひんやりする。

一気に女医さん以外のスタッフが動き始めた。

返り血防止と思われるビニールや布が張られ
エプロンやゴーグルが追加される。

あ、ここからが本番ぽいぞ❗

若いお医者さんではなく、女医さんが私の正面に立った。

「お手伝いしますので、良さそうなタイミングで来て下さい」

タイミング、わかる、ぽこぽこが張った瞬間だ。

そしてお産は、一瞬で終わった。

タイミングで、いきむ。

女医さんの目が一点から動かないから
しっかり捕らえたんだなと確信する。

助産師さんが「赤ちゃん出てきますよ。見ていて❗」

さあここからが、夢で見た部分だとドキドキしながら
視線を女医さんの目から自分の両足の間に移す。

私が夢で見たもの。

ひとつめ 「それほど血まみれではない赤ちゃん」

来た。

髪の毛の感じも、夢と同じだ。

ふたつめ 「右側が盛り上がった、少し低くなった自分のお腹」

これも同じ。

夫に話すのが楽しみだ。

そして最後、みっつめ 「寂しい気持ち」

お腹の中にいる分には守ってあげられるけど
外に出てしまったらそれには限界がある事を寂しく思う。

あの夢は、やっぱり時間が交差したんだろうか。。。

あれ?

ていうか、うちの子、、、

「すみません、その子、産声あげました⁉️」

私が慌てて訊いた瞬間、ぽこぽこ君が礼儀正しく
おぎゃあと泣いてみせた。

その後も、あまり力いっぱいは泣かず、おとなしくへその緒の処理などをされていた。

鉗子で引っ張ったので、いつの間にか小児科の先生もジョインしていて
「大きな傷はございません」と報告してくれたりする。

ぽこぽこ君は、私の隣に置かれた。

分娩室内を動き回るたくさんの人影を目で追いまくり
最後に私をひたと見つめた。

「そうだよ、毎日お話ししてたママだよ?
パパもおうちで待ってるからね。」

その後、女医さんが隣でレクチャーしながら
若いお医者さんが一生懸命私のあそこを縫っていた。

事前に
「無痛分娩と和痛分娩は別物です。
和痛は陣痛の痛みを緩やかにするだけで
分娩の時は普通に痛いです」
と聞いていたけれど、全く痛みはなく
本当にこれにして良かったと思っています。

朝6時から痛い痛い言ってて、産まれたときには夜中の1:33だった。

長いなあ。母子手帳には18時間って記録されていた。

でも短い方らしい。

産んだ後すぐには私を動かせないらしく
お部屋に着いたのは朝の4時だった。

麻酔が切れ始めた瞬間から、あそこが痛すぎて悶絶。

こんなんで寝れる訳なくね⁉️と思い
訊いてみたところ、朝5時に診察してくれた。

どうやらこういうものらしい。

でも、念のため2時間後にもまた診察してくれると。

それで朝7時にまた診察。

やはりこういうものらしい。

これがみんなが言ってたやつかー。。。痛いなあー。。。

朝8時に朝食が運ばれてくる。

母となって初めての朝で、食事だ。

新しい日々が始まったんだ。



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