『妊婦は生もの禁止』の苦しみを、一気に解き放つ日を心待ちにしている。
妊娠が発覚し、生ものは駄目ですよと言われた時には
「はあ、了解です」くらいのものだったが
この世には思っている以上に生ものが溢れている。
生もの禁止生活が始まってから、それを痛感した。
近所に華屋与兵衛というファミレスがあってお気に入りなのだが、
そばに付けるミニ丼が選べないのだ。
マグロ漬け丼、ネギトロ丼は駄目。
天丼は主役が海老で、私は海老アレルギー。
ヒレカツ丼には興味がない。
全く楽しくない。。。
解禁の暁には、ネギトロ丼を付けるんだ、絶対に。
駅前にテイクアウト専門のお寿司屋さんがある。
私はいつも、見ないようにしている。
見たら買いたくなるから。
出産して退院の際には、このお店にタクシーを着けて、
大量に買い込んでやりたい。
我が解禁日を祝福するのだ。
生ものを食べない生活になると、山葵の活躍の場が激減する。
良さげな山葵をすりおろす情熱は強制的に鎮火され、
もうチューブの山葵で良くね？と捨て鉢なスタンスになった。
生もの解禁の暁には、寿司、海鮮丼、暴れ食いしたい。
いか納豆も食べたいんだ。
築地場外もふらつきたい。
美しい紅色に輝く鮪を厳選して買い、お夕飯をお刺身定食みたいにしたりしたい。
そしてまた、珠玉の山葵をすりおろすのだ。
私は、お祝い事の日には必ずお寿司をとる家で育った。
我が家庭もそうしたい。
子どもと手巻き寿司とかもしたい。
寿司、刺身のない生活をしてみて初めて、
自分がどんなにそれらを好きかを知った。
日本に生まれて良かった。
我が子にも、この幸せを知ってもらいたい。
でもイカにだけは気をつけよう。
私は幼少期に幾度となくイカを喉に詰まらせて危険な目にあってきたから。
イカデビューだけは遅めにしよう。
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